実写版『鋼の錬金術師』は僕らに原作の面白さを再認識させてくれる名作
ドーモ、ぶらぼーです。
今回は実写版「鋼の錬金術師」を観た上での感想について軽くまとめていきたいと思います。
ざっくりとした感想
実写版ハガレン観た。原作三週程度しかしてない俺の感想としては大泉洋が好きなら見る価値あるけど原作未読だと話が5割ほどわけわかんないと思う
— ぶらぼー (@Bravo4402) 2017年12月2日
今作において、大泉洋が好き勝手大暴れしていく様は数少ない癒やしでした。終盤の行動があまりに脈絡なさすぎるのでたぶん理性蒸発のスキルを獲得したんだろうと思います。
同行者は死ぬほどハガレン好きな奴だったんです。
彼は職業倫理に従ってか最初は「いいとこ探しするわ!」と息巻いてたんですが、映画館を出てから居酒屋の椅子に座るまで何も喋りませんでした。怖かった。
言っちゃえば、クソ映画ではないですが普通にあんまり面白くない映画でした。
正直気になる所を挙げればキリがないんですが、良い点悪い点を箇条書きに落とし込んでみました。
評価点
・(特に最序盤の)町並みが綺麗
・監督の原作愛が画面から伝わってくる
・ヒューズ、マリア・ロス、アルフォンスの「それっぽさ」
・本田翼がかわいい
・悪役ムーブの大泉洋が堪能できる
辛かったところ
・主人公の髪染めが汚い
・主人公の喋り方がわざとらしい
・アジア人しかいないアメストリス
・彩の宝石と化した賢者の石
・原作既読前提の情報ラッシュ
・コスプレ集団vsマネキン軍団
・はっぱ隊グラトニー
・原作愛は伝わるけど伝わってくるだけ
ってところでしょうか。
所詮はクソオタクなので視覚的な情報に偏りがちになってしまっているのは否めないところです。
ですので、開き直って登場人物についてのレビューを通して色々コメントしていきたいと思います。
イタリアの町並みは最高です。
キャラクター紹介と所感(以下ネタバレ)
①エドワード・エルリック(演:山田涼介)
数少ない金髪枠にして主人公。たぶんエドワード・エルリック。錬金術は殆ど使わない鋼の錬金術師。
正直彼が一番解釈違いを起こし続けて辛かったです(役者に罪はありませんが)。
原作愛が凄いという話はしましたが、台詞の多くや一部のカメラカットは原作のそれなんですよ。
ただ、突然名台詞を吐いたり棒読みだったり、「え?このタイミング??」みたいなことが多いうえに、ハガレンの漫画的な言い回しがそれに拍車をかけていくスタイル。
見た目に関しては髪染めが汚い以外文句ありません。強いて言えばうしろ髪にずっと変な癖がついてた記憶しかありません。
最期唐突に悟りを開きます。
②アルフォンス・エルリック(演・水石亜飛夢)
鎧の弟。外見における原作再現度ダントツ一位。
釘宮ボイスだったのも今は昔。彼も立派な少年です。
水石の演技もナイーブだけど芯は強い少年像をとてもよく描けていました。
大泉タッカーに振り回される係なので、「自分は人造された存在なのでは」という疑問を抱いたり、タッカー編にして錬成陣なし錬金術を会得したりします。
あと鎧でのアクションは格好良かった。
③本田翼(演・本田翼)
ウィンリィ・ロックベルを自称する本田翼*1
本田翼だからかわいい。かわいいけど台詞回しと演技に何故か懐かしさを感じた。
エルリック兄弟と幼馴染らしいんだけど、それらしい話もしないし錬金術で偽りの記憶を定着された本田翼(アメストリスのすがた)なのかもしれない。
オートメイルに詳しいらしいんだけどほぼ描写されないので真偽は怪しい。
あと常に最前線に出張るのはやめたほうがいいと思う。クソ邪魔だから。
④ロイ・マスタング(演・ディーンフジオカ)
女たらしではない大佐。 顔面がいい。
途中までめちゃくちゃはまり役だなぁって思ってました。
問題は今作のマスタングが復讐を全うしてしまうことなんです。
原作ではイシュヴァールのアヴェンジャーことスカーに諌められるなどして復讐の是非に悩んでいた彼ですが、指パッチン連打と謎かえんほうしゃでラストを焼き上げてしまいます。
あと兄弟の肉体を取り戻したいって願いはスルー。
↑原作者・荒川氏が昔「マスタングはミッチー」と仰っていたことを忘れません。
天才狙撃手。「鷹の目」の異名を持つが別にクリティカル威力を倍増させたり戦艦を一刀両断したりはしない。
なんか捕まったり大佐の負傷の要因として機能してました。
戦略には明るくないのですが、敵の物量作戦に対抗するぞ!って三段撃ちみたいな陣営を組んでおきながらボルトアクションライフルで最前列に位置するのは効果的なのでしょうか。
コスプレ感ナンバーワン。
⑥ヒューズ(演・佐藤隆太)
デスクワーク派なのに動ける系おじさん。嫁さんも美人だし大佐やエドたちのことを常に心配する苦労人。
ヒューズは今作きっての名配役でした。彼周りの描写にはほとんど差異もなく、原作再現度だけで言えばトップクラスだったのではないでしょうか。
強いて言えばお子さんが胎内回帰してたり、やたら友達推ししてくるフレンズになってましたが、彼がいなければ完全にこの映画はどうしようもなくなっていたでしょう。
⑦ラスト・エンヴィー・グラトニー(演・松雪泰子、本郷奏多、内山信二)
チーム・ホムンクルス。色欲・嫉妬・暴食の名を関する人造人間。
「お父様」はいるのかもしれないけれど、説明はほとんどされていないこともあって賢者の石に近づいたやつを絶対殺すマンとしてのみ機能。
ラストは人間としての死を求めちゃうしエンヴィーは大佐に指パッチン連打されて気付いたら炭化しちゃっているしグラトニーはクソCGだしで辛さの権化として大活躍。
ことグラトニーは食欲を理性的に管理した挙句、腹の口開放時ははっぱ隊みたいなモーションで敵を追いかける始末。シリアスな笑いをみなさんに提供してくれます。
⑧ショウ・タッカー(演・大泉洋)
「君のような勘のいいガキは嫌いだよ」で有名なマッドサイエンティスト。
僕は「水曜どうでしょう」が熱狂的に好きなこともあって評価が甘くなっているきらいがありますが、存在感だけは尋常じゃありませんでした。
また、タッカーの周辺描写だけはめちゃくちゃ気合が入っていたこともあり、ニーナとアレキサンダーを悪魔合体、エドに殴打されたのち逮捕までの流れは非常によく描かれていました。
問題は終盤における再登場です。アルへの復讐を胸に、ホムンクルスが暴れているスキを突いて脱獄したタッカーはアルと本田翼を拉致って国家錬成陣の要所・第五研究所に拘束します。
彼が監禁場所として選んだのは軍部がイシュヴァール人を触媒に賢者の石を錬成していた部屋であり、なんか知らないけどいっぱい賢者の石が貯蓄してありました。
そこで彼はとりあえずアルに真理の門を開かせます(先述のパワーアップ)。寝てた記憶はないんですけど、彼が真理の門を開かせた理由は謎です。誰か教えてください。
(終盤の展開はぐだぐだすぎて記憶にさほど残っていません)
よく覚えていませんがたぶん裏切り者だったハクロ将軍に殺されたはずです。
悪に堕ちる。復讐のために。をキメてヴェノム大泉洋になってからの迫力と、ゲロ以下の臭いは圧倒的でしたが、行動の動機が「天才を貶めたい」くらいな感じなのでよくわからないまま暴走したって印象です。
穏やかな研究者/ヴェノム大泉の二面性はとても魅力的でしたが、矢柴俊博でよかったような気もします。
↑原作のショウ・タッカーと矢柴俊博。これで良かったんじゃねぇの??
⑨マリア・ロス(演・夏菜)
原作ほど活躍してませんでしたけど、見た目の完成度だけで言えば完璧でした。
⑩ティム・マルコー(演・國村隼)
ショットガンを構えた姿がアウトレイジみたいでつよそうでした。
⑪ハクロ将軍(演・小日向文世)
アウトレイジとデスノートの月を悪魔合体したら出来上がった人物です。
反射神経はすごい。
⑫コーネロ教主(演・石丸謙二郎)
親父狩りの被害者。説明なしに偽賢者の石を強奪されます。彼の使うCGが一番きれいです。
(一応中盤でチラっと彼の騒動についての説明はされます)
実写版「鋼の錬金術師」が僕に与えてくれたもの
ここで挙げた指摘の多くは原作を読んでいるがゆえの違和感に基づくものであり、未読なら筋の通った行動をする人々が描かれているのかもしれません。
説明の省略の相次ぐ今作をどう乗り越えたのか気になるところではありますが。
繰り返しになりますが、世間で言うほどのクソ映画ではないと思います。
あくまでただのあんまり面白くない映画です。
観たあとの飲みはそれなりに楽しいのでそれ目的ならアリです。
僕がこの映画を観て得られたもの、それは原作の面白さです。
尺の都合とかもありますからしょうがないんですけど、ハガレンの良作たる理由の一つに場面の接続がしっかりとできてるってのがあると思うんですよ。
ニーナの件を最後まで引きずりながらも、弟を助けるために戦い続けるエドの姿は最高に好きな主人公ですし、第一話と最終決戦の演出被りはその連続性を如実に表している名シーンだと思います。
ただ、今作はそういった名シーンを上辺だけトレースしていたずらに散りばめてるだけって感じなんですよね。
それも相まって「ああああああハガレンってすげー面白い漫画なんだなあああああ」と150分のうち5回位噛み締めました。もう一回ブリッグス編だけでも読み直したい。
未読の方はマジで読んで損はないと思います。めちゃくちゃ値の張るパンフだと思って読んでください。その頃には既読者の葛藤が理解できるのではないでしょうか。
原作の面白さを再認識してくれたという観点では、今作はまごうことなき名作です。
続編もやる気満々のエンドロールでしたが、個人的にはもうやらなくていいと思います。
ここまで粗文をお読みいただきありがとうございました。
※参考